トマトジュース
最近、久しぶりにトマトジュースを飲んだ。
嗅覚と思い出は結び付きやすいから、という話はよく聞く。確かにパチンコ屋の換気扇の匂いを嗅ぐといつも同じ光景を思い出すし、しばらく行ってない居酒屋の前を通ったときにとても懐かしい気持ちになった。
でも、嗅覚だけではなくて、味覚にもその効果はあると思う。私はそのどろっとした飲み物を口に入れた瞬間に数年前の思い出が頭にいくつも浮かんだ。
あの日トリキでふざけて頼んだトマトハイ。
冷蔵庫に常駐したお気に入りのトマトジュース。
塾に行く前のコンビニで新しい種類の紙パックを手に取ったこと。
全部夏だった。
東京の暑さ。湿気で重い空気、夜でも涼しくならなくてイライラ。
東京の夏は嫌いだけど、あまりにも思い出が濃すぎた。
早く会いたい友達がいる、夏がある、もう一生戻れないむなしさがある。
タイムマシンがあるならあの頃に戻るけど、そんなの現実的じゃないから、トマトジュースをまた手に取るだろう。
舌に残るざらつきが、きっと一瞬だけあの日の私にしてくれる。